昨日は人の上、今日は我が身の上なり。花さけばこのみなり、よめのしうとめになる事候ぞ。信心をこたらずして南無妙法蓮華経と唱へ給ふべし。(寂日房御書 平成1394㌻)

 仏教では世の中の変転極まりない有り様を「諸行無常」と説いているが、現代人は余りにもこうした世の現実に無頓着ではなかろうか。 
 東日本大震災で被災した人たち。テレビなどのマスコミで、近い将来東海沖や東南海、南海地震が起きる可能性をたびたび指摘するが、多くの人は漠然とした不安は懐きつつ、それより前へは進まない。
 地球温暖化は人間自身が起こしているにもかかわらず、真剣な対策をとろうとしない。それでいてゲリラ豪雨や台風の巨大化、竜巻の相継ぐ発生などの驚異におびえる現代人は滑稽ですらある。
諸行無常の世の中であればこそ、人は謙虚に生きなければならないし、我が身を省みることも必要だ。それができない現代人に何が欠けているかと言えば、信仰である。「明日は人の上、今日は我が身の上なり」との大聖人の教えは、人々の信仰心の喚起、信仰心への訴えと受け止めなくてはならない。
 植物が花を咲かせて実を結ぶは因果の道理。若い女性が嫁入りして、子どもを育てるうちに、いつの間にか姑になっていくのも、因果の理法の一端であり、諸行無常の顕われである。ところがまことの信仰心がなければ、このような姿にも、意義は見いだせないのである。
 大聖人は「信心を怠らずして南無妙法蓮華経と唱えなさい」と仰せであるが、三大秘法の御本尊に向かい、唱題するところに、今を生きる智慧は必ずわいてくる。